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貧困大国アメリカ

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『ルポ 貧困大国アメリカ』堤未果著(岩波新書)を読みました。
凄いのひとこと。ゾッとしました。

目次は、
第1章 貧困が生み出す肥満国民
第2章 民営化による国内難民と自由化による経済難民
第3章 一度の病気で貧困層に転落する人々
第4章 出口をふさがれる若たち
第5章 世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」


私の感想>>

「アメリカ農務省のデータによると、2005年にアメリカ国内で飢餓状態を経験した人口は3,510万人(全人口の12%)、うち2,270万人が成人、 1,240万人が子どもである…。」

もともと中産階級がたくさんいたアメリカであるが、1980年レーガン大統領が誕生するや、サプライサイドエコノミーと呼ばれる企業国家へのシフトの中で、富裕層と貧困層という2極化への強力な再編が始まった。

社会保障予算が削られる中、怪我や病気をするととんでもない治療費を支払うことになる。私もマイケル・ムーア監督の映画『シッコ』を観た。壮絶だった。指の縫合手術で数百万円の請求、お金がなくなると病院からタクシーで捨てられる老婆、民間の疾病保険に入りながら支払いを拒絶される多くの人々。

さて、そうやって作り出された貧困層めがけて軍隊への勧誘が行われる。生活苦や学資返済のために入隊する若者。そして、劣化ウラン弾に起因する被爆や心的障害を負っての帰還。更なる貧困へ。

最悪は、戦争請負会社の存在。徴兵制のなくなったアメリカでは、正規軍の他に、軍のやるべきことを民間で請け負う会社が肥大した。代表格がハリバートン社で、巨額の利益を稼いでいるのだろう。これは、現副大統領であるディック・チェイニーが1995年から2000年までCEOを務めた石油サービス・建設会社。ここに大量のアメリカやアジアの貧困層が入隊(?)している。

アメリカ軍のイラクに於ける死者は累計4,000人以下であるが、こんな少ない訳がないよな〜っと思っていた私のカンは当っていた訳だ。民間の米国人の死者数は発表されないのだから!

著者が告発している問題は、アメリカの問題だけではない。日本も同様の問題が起っている。
貧困層の増大、生命保険や損害保険のトータル数千億円にのぼる不払い、国の医療保険や年金制度の脆弱化。
危機が迫っています。

みなさんもこの『ルポ 貧困大国アメリカ』、ぜひお読みください。