日本のエコビレッジ
日本ならではのエコビレッジ
日本でも以前から取り組まれていた「支え合い」や「循環」を重視した暮らしやコミュニティづくりが改めて「日本のエコビレッジ」として認識が広まっている他、エコビレッジと重なる概念をもつ「コーポラティブ」や「コハウジング」スタイルの都市型コミュニティや、日本の里山文化や有機農業にエコビレッジのアイディアを合わせた取り組みなどが新たに生まれてきています。
日本のエコビレッジ紹介(2007年編)
・日大エコキャンパス(神奈川県藤沢市)
・エコヴィレッジ鶴川(東京都町田市)
・小舟木エコ村(滋賀県八幡市)
・京都洛西ニュータウン コーポラティブ住宅ユーコート(京都府京都市)
・伊達エコビレッジプロジェクト(北海道札幌市)
・木の花ファミリー(静岡県富士宮市)
・日本におけるエコビレッジの可能性
【関連文献】
* エコビレッジの意義と日本での展望(PDFファイル)
− 持続可能な社会構築に向けた草の根のコミュニティづくり −
* 里山の温故知新と里山エコビレッジ(PDFファイル)
- 著:糸長浩司
- NPO法人パーマカルチャー・センター・ジャパン代表理事
- 日本大学教授(生物資源科学部生物環境工学科 建築・地域共生デザイン研究室)
学生と造るエコビレッジのモデル
日大エコキャンパス
糸長浩司 日本大学生物環境工学科教授
日本大学生物資源科学部生物環境工学科 建築・地域共生デザイン研究室
はじめに
大学キャンパスは、学ぶ学生と研究・教育する教員達からのなる一つのまちである。大学キャンパスのエコロジカルな挑戦は、実際のエコロジカルなまちの細胞であるエコビレッジのモデル建設の実践的挑戦である。筆者の所属する日本大学生物資源科学部は藤沢市近郊に位置し、校舎、研究施設、農場が配置され、50ha以上の広大な敷地を持つキャンパスである。その一角を利用して、筆者が2001年から主体的に学生達と行っているエコロジカルなキャンパスづくりの挑戦を報告する。筆者が教育する生物環境工学科の学生は生物、環境、建築への問題意識を持ち、建築、造園、環境デザイン的テーマに興味をもち、実践的な環境創造行動にも熱心に取り組む。
1.学生達とのDIYでの自然建築、エコ建築づくり
2001年度にキャンパス内の農場の一角で新しい研究施設として、生物環境科学研究センターの設計・施工に関わったことがスタートである。本研究施設そのものが環境実験・研究装置であり、エコ建築、エコロジカルランドスケープの視点で設計・施工を進めてきている。「自然の力を生かす」というコンセプトの下に、大地、緑、生物資源を活用した人間にとって有用な環境創造を目指している。アースチューブ、ソーラーパネル、屋上・壁面緑化等の環境共生型装置を備え、また、植物による汚水浄化実験棟、敷地内でのパーマカルチャーによる野菜や果樹栽培、ストローベイル(藁を束ねて箱状にした家畜の餌用ブロック)・土・木による自然建築等のものづくりを兼ねた小規模な実験的エコキャンパスづくりである。本研究施設内の主要な壁600m2は、左官屋さん指導による学生達とのワークショップで珪藻土を塗った。建設後は、「ポストデザイン」的手法で、環境共生設備や壁面緑化等での省エネ等の環境形成の効果評価研究を継続的に実施している。
敷地内では、ストローベイルやラムドアース構法(版築構法)でのモデル的な自然建築(プロジェクト内では通称「アトムハウス」と称している)を、大学生、建築家(遠野未来氏)、左官屋、地域の子どもやエコ建築に興味のある人達や環境NPOとのWSで進め、建築を共同で作ることの楽しさや難しさも体感している。環境建築の視点から、建築施工、建築材料、環境工学等を総合的に考え、実際に建築をセルフビルトし、「プレデザイン−デザイン−施工−ポストデザイン」の一連の過程を実施している。
居住者として想定される学生達自信が、建物、菜園を造り、その維持・管理をし、その環境性能を評価し、改善していくという、DIYとPDCAサイクルの環境創造・管理プロセスを組み込んだ取り組みとして進めている。環境共生型まちづくりにおいて、住民主体のDIYとPDCAは重要となっている。
日大生物環境科学研究センター(CNES)竣工時景観 |
CNES施工過程で学生参加による珪藻土壁塗りWS |
CNES ビオトープ池づくりのWS |
CNES2年後のビオトープ池周囲の風景 |
CNESのアースチューブの空気取入口、樹林で日掛けと冷気の生産 |
CNESのパーマカルチャーガーデンづくり |
2.植物を多様に活用した有用な総合的なエディブルランドスケープの創造
持続可能な農的暮らしのデザインであるパーマカルチャーの理念と手法を用いて、多様なエディブルランドスケープ、コミュニティガーデンの実験の場として創造されてきている。建物にとっての断熱性能として採用される屋上緑化や壁面緑化にもブドウ・キュウイ・サルナシ・アケビ等の食べられる植物を栽培し、また、南の庭は豆科の植物、コンパニオンプラント(共栄作物)を導入し、各種の果樹・野菜・ハーブの混裁型果樹・菜園が作られ、また、ビオトープ池や水路の水環境も形成されている。循環型土づくりとしては、野菜屑によるミミズ養殖と堆肥づくり、移動式鶏小屋、豆科・緑肥作物による土づくりを行い、無化学肥料と無農薬肥料によるエコロジカルガーデンが形成されつつある。また、センターの別のグループは敷地内にある建設残土の丘を活用した棚田での合鴨同時水稲作の自然有機農法での米作りを小学校の総合学習プログラムとして実践している。
さらに、ユニークなものとしては、植物による汚水浄化プラントの開発研究、養殖排水を活用した水耕栽培のアクアポニックスシステム開発研究であり、植物と微生物資源を活用した汚水浄化・活用システムの実験研究を温室棟で進めている。北欧やエコビレッジで試みられている生物資源活用型での生活排水処理、食糧生産、水系ビオトープ形成の複合的なシステム開発研究である。
おわりに
自然・生物系と工学・建築系の融合、複合化により、人間と自然が共生し、かつ人間生活が多様な面で豊になる身近な環境をいかに自分達で創造し、持続的な管理・活用していくのかを基本テーマとして、大学キャンパス内での学生と教員によるキャンパス内のエコビレッジづくりのモデルと自負しており、今後とのエコロジカルなまちづくりの一つのモデル的な場として、環境まちづくり教育の場として活用していけるようにしていきたい。
CNES内の敷地でのアトムハウス(ストローベイル+ラムドアース)建築の敷地整地WS |
ラムドアース一体施工後 |
ストローベイル壁施工WS |
ストローベイルへの荒木田塗りに近くの小学生も参加したWS |
アトムハウスの外壁仕上げのWS、学生と全国から参加者によるWS |
CNESでの植物による汚水浄化実験プラント/建築における水系デザインの一つとして |
エコヴィレッジ鶴川
総合企画/事業コーディネート/基本設計:
株式会社アンビエックス
〒152-0031東京都目黒区中根1-10-18
TEL:03-5731-3624 FAX:03-3725-5652
http://ambiex.jp
位 置: 東京都町田市
設 立: 2006年12月末竣工
居住者数: 29世帯
駅から歩いて15分のところに、小高く隆起した雑木林がありました。この付近一帯は、森林を根こそぎ切り倒し、丸坊主にして外国産木材を主体とした新築住宅郡で埋め尽くされつつあるところで、緑多き能ヶ谷の里ののどかさは無くなりつつある状況でした。私たちが出会ったのはそんな開発一歩手前の時でした。一歩敷地内に足を踏み入れると、緑豊かな雑木林が広がり、かまどのある築120年の古民家に土蔵、自然菜園、田んぼ、茅葺きの納屋があり、とても東京とは思えないのどかな風景に心温まるものがありました。ここに出会ったことを運命に感じ、それらを残し、税法や資金繰りを全てクリアし、この地に末永く残る建物とコミュニティを創りたいと、このプロジェクトがスタートしました。コーポラティブ方式で住民を募集し、豊かなエコライフを大都市で実現しようと呼びかけ29世帯(30戸)の家族が集まり、約2年をかけて、全員参加の手づくりで完成にこぎつけました。
施設例:
コンクリートを緻密に打設し、内部の鉄筋を効果的に配置した300年を目指す高耐久性マンション。
・徹底したシックハウス対策で、ほとんど化学物質を使用していない。
・電磁波対策に配慮し、電磁波過敏症をお持ちの方にも住んでいただいている。
・外断熱通気工法にし、断熱効果を高めているので(断熱性能:寒冷地仕様相当)、ライフサイクルCo2の発生が少ない。
・国産木材を使用している。
・屋上菜園や自然菜園があるので、農的生活が営まれている。
・大人同士、子ども同士、大人と子どもとも仲睦まじいコミュニティが実現した。企画者サイドから見てもうらやましいぐらい。
・緑と環境委員、大工クラブ、カーシェアリングクラブ、子育てクラブなどが現在活動している。
小舟木エコ村
事業実施:
株式会社地球の芽
本社〒523-0892 滋賀県近江八幡市出町170
TEL 0748-33-7522 FAX 0748-33-8686
www.chikyunome.co.jp
設立:
2000年11月NPOエコ村ネットワーキングが発足。2003年 3月事業会社として株式会社地球の芽が設立。同年4月産官学民連携の団体、小舟木エコ村推進協議会が発足。2003年6月内閣官房都市再生本部環境共生まちづくり事業に選定。2007年1月造成工事着手。2008年4月第一期建築工事開始。2008年秋頃「小舟木エコ村」プロジェクトまちびらき&入居開始(予定)。
位置:
滋賀県近江八幡市小船木町
(JR近江八幡駅から1.8km、琵琶湖まで3km、旧市街地まで2km)
人口:
358世帯を予定。(2007年9月現在、造成工事中)
環境共生型コミュニティ「エコ村」を産官学民の協働で創っていくまちづくりプロジェクトで、約15ヘクタールの土地に、将来的には約1000人が住むコミュニティを育てていきます。中心となって進めているのは、全体構想を描く「NPO法人エコ村ネットワーキング」と事業として実施する「(株)地球の芽」です。地元の農業・商工団体やNPOが参画する「小舟木エコ村推進協議会」を設立し、世界の先駆的なコミュニティや研究者とも連携しながら計画を進めてきました。「持続可能性は日々の暮らしから」をキイワードに、ライフスタイルを見直すきっかけが身近なところにあふれているまちとなることを目指しています。
施設例:
・エコ村住宅:
平均70坪のゆとりのある敷地で光と風をとりいれやすい区画割にしたり、地元・滋賀の木を活用したり、人と環境に優しい家づくりをすすめていきます。各戸の菜園では野菜を栽培し、雨水を集めて散水し、庭で収穫した野菜を食べ、でてきた生ゴミは堆肥化するというサイクルを通して、エコ村内での物質循環を目指します。
・風景づくり:
近江八幡は、全国に先駆けて重要文化的景観に認定された町。エコ村でも、入居する皆さんと一緒に、建物や、外構・庭づくりについての自主協定「小舟木エコ村風景づくり協定」を定め、将来に渡って、サスティナブルなまちをつくっていくことを提案しています。
・集会所・公園:
入居者をはじめ、近隣に住む人の交流・リクリエーションの場となります。公園は、入居者の皆さんとワークショップ形式でつくりあげていく予定です。
・農産物販売所・菜園:
公園のすぐ横には、農産物販売所ができる予定です。地元から集まる無農薬野菜やこだわりの加工品を中心に、みんなが自慢のレシピや野菜の育て方のコツを持ち寄る場へと展開していきます。小舟木エコ村での農の取り組みをサポートするのは、NPO法人百菜劇場(www.100seeds.net)。現在、エコ村南側の農地で、農の連続講座や貸菜園を運営しています。
位 置: 京都洛西ニュータウン
設 立: 1985年
居住者数: 48世帯
エコロジカルな住み方を育くむコーポラティブ住宅
ユーコート入居後20年を伏目に、子ども時代にそこで育った今青年になった面々に、ユーコートで育ったことの思い出を語ってもらい評価の聴取調査をしました。共通した意見として次のような反応がかえってきました。
ひとつは、緑濃い共用空間と個性的な住戸群の連なりの48戸全体をプレグナントな(含蓄のある)「ひとつの家」とみなしていることです。現代の集合住宅が均質で無機的でよそよそしいのに、ここでは外から帰ってきた時帰着感を届けてくれる柔らかい表情への共感とともに「スマートな個人主義とゆるやかな共同性が精妙に結びあう住まい方の志向性」が育まれてました。
いまひとつは、身近な環境の中に多様な自然があるところに育ったことによって、「自然がないとソワソワする。落ちつかない」といわれるように、自然・人工の共生環境志向が育くまれました。
加えて、共に住むことの肯定と否定をつなぐエステティックな住み方志向が芽生えていることです。共同することや共同空間への対応において、アンビバレントな両義的なふくらみのある発想をもって、自然への親和性のある生命的エコロジーと、人間関係を大切にする社会的エコロジーと、そうした場に生きることの価値を大切にする精神的エコロジーを総合的にとらえるエステティック(美的な)生き方を育んでいる傾向は、これからの時代とっても大切なことを示唆しているように思います。
ユーコートは、これからのエコビレッジ的住み方にひとつの具体的・普遍的内容を提起していると思います。
施設例:
1985年11月入居後20年をこえる今日まで、共用空間はちょっぴりワイルドな森のような環境に育てられてきました。中層集合住宅の壁面にツタが育まれ、見事な立体緑化が持続されてきました。最初は子どもたちが花をちぎったり草花をふんづけたりするトラブルが多発しましたが、親たちは「○○してはいけない」と禁止の世界に子どもを追いやるのではなく、子ども自らが生命ある自然を守り育む担い手になるのを待ちました。草花をちぎってもしからずに子どもの自発的かかわりを引き出すことや、水の管理をわずらわしいことから子どもの楽しい遊びに変える中で、「トラブルをエネルギーに変える」しなやかなくらし方の経験がユーコートには蓄積されてきました。
・共用庭に池やせせらぎを導入することは、維持管理のわずらわしさや子どもの事故の危険性等の理由から、設計段階では否定的意見も飛びかいましたが、ホンネトークの末基本的に合意形成をとってそれを実現させました。日常的に水にふれられることに加えて、月1回の共同清掃の時も、特に夏ならば子どもにとって冷たい水にふれられることはキモチのいい、遊び同然のこととなりました。
企画コーディネート:エコビレッジ実行委員会 事務局 (有)西篠インテリアデザイン
〒002-8081 北海道札幌市北区百合が原4丁目8-1
TEL:011-774-8599/FAX:011-774-8581
www.saijo-d.com
設立:
エコビレッジ実行委員会は環境共生型、循環型のエコロジカルな住環境づくりに共感して集まった有志による市民団体です。市民講座、セミナーの運営やエコロジー関連の情報収集、実際のエコビレッジ計画の企画やワークショップに参加しながら、市民参加によるまちづくりを目指し活動しています。2000年春、札幌の藻岩山にエコビレッジをつくろうと市民に呼びかけたのが活動の始まりです。2008年、着工予定。
位置:北海道伊達市館山町17
面積・居住者数:
1081,87坪(個人所有地:300坪、共有所有地:780坪)・戸建住宅4-6世帯を予定
伊達エコビレッジは気候温暖な高台に位置し、噴火湾を望む眺望と生活環境の整った1081坪が建設予定地です。そして「集まって住むことにより、個人ではできないメリットを活かし、エコな取り組みにチャレンジすること」をテーマの一つにしています。また、個人所有地と有機菜園などの共同所有地を分けることで各々のプライバシーを守りながらコミュニティ空間を共有することを目指しています。
施設例:
エコハウス
・太陽熱利用や雨水貯水をし、家庭菜園や散水に利用。
・壁面や屋根の緑化など緑と暮らす工夫をする。
・環境に優しい木質ペレットを燃料とした暖房や給湯システムを取り入れる。
・地域の資源を活用した地材地消の家作りを目指す。
・ルールを守りながら建物は全体の調和を考え、室内のインテリアは自由設計とし、住民が家作りに積極的に参加できる。
共同所有地
・有機菜園やコミュニティ空間を作る。
・コニュニティの中心地となり、菜園生活を楽しむことができる。
静岡県富士宮市下条923-1
TEL:0544−58−7568/FAX:0544−58−8015
http://www.konohana-family.org/
設立:1994年
位置:富士山の西の麓
人口:46名
1994年に「木の花農園」としてスタート。「地球を汚さない暮らしをしよう!」という想いを抱いた20名のメンバーにより創立。命名は富士の主神である木花咲耶姫(このはなさくやひめ)に由来。無化学肥料・無化学農薬の有機農業により、11種の米や200種以上の野菜を栽培、食べるもののほとんどを自給。手作りの味噌・醤油、自然卵や山羊のミルク、はちみつなども自給し、さらに、お米や野菜、お菓子などの加工食品を地元及び全国に宅配してコミュニティ全体で収入をあげている。
生きとし生けるものが調和した平和な社会づくりを目指し、現在14世帯46名が血縁を越えた家族として、子育てを共同で行い、収入も平等に分け合うなど、共に支えあう小さな社会をつくっている。最近では、ITやアート、環境やまちづくりなど、様々な専門や才能を持つ若い世代が多く移住するようになり、海外との交流も盛んになってきたことから、2007年4月より名前を「木の花ファミリー」に変更。スコットランドのフィンドホーンなど海外のエコビレッジとの交流や、外部の人たちとの協働によるエコビレッジづくり、地元・富士宮市でのまちづくりの展開など、さらに活動が広がっている。
また2007年より、コミュニティの暮らしを体験できる1泊2日の体験ツアーを毎月開催。その他日帰りの訪問者も含め、月間平均100名以上が共同体の暮らしを見学しに訪れている。
2008年以降は、「日本エコビレッジ推進プロジェクト」や開発と未来工房など外部のNPOと協力し、日本初のエコビレッジデザイン研修を富士宮市で開催する準備を進めている。
特徴
・血縁、世代を超えた共同生活
・3つの住居で生活(本宅・まことの家1号館・2号館)
・収入はファミリーで得て、大人全員で平等に分配(血縁を超えたひとつの家計)
・化学肥料、化学農薬を使わない自然農法により、食べるもののほとんどを自給
・玄米菜食をベースにした健康な食生活、EM菌の活用
・自然をモデルにした調和の精神、こころを磨くことを重視
・創立以来一晩も欠かさない夜のミーティングで日々の運営を決定
・心の問題をはじめ、あらゆる事柄を全員でシェアする
・心の病を持つ人を受け入れ、回復を支援
・富士宮市との共同事業により有機農業実践講座などを実施
・自然食レストランや出版・教育事業などの「いのちの村」づくりを推進
日本におけるエコビレッジの可能性
かつて至る所で有機農業や里山文化を中心とした、持続可能な循環型の暮らしが営まれていた日本。
しかし、第二次世界大戦後、社会システムの変化や経済発展、グローバリゼーションが進む中で、本来、地域コミュニティや農村がもっていたその社会的機能は大きく衰退してしまったと言われています。
そんな社会的機能や循環型の暮らしを取り戻そうと各地で持続可能で支え合う地域づくりが始まっています。
退職後の田舎暮らしと二地域居住
約690万人とされる団塊世代(昭和22〜24年生まれ)が2007年から定年退職を迎える中、少子高齢化時代の到来とともに、2015年には65歳以上の高齢者の割合が4人に1人になるといわれています。
こうした中、団塊世代を含むシニア世代(年代の定義はさまざまだが、50歳以上の年齢層を指すことが一般的)の農村地域など地方への視線があります。
地方では既に、UIターンや観光などでシニア世代に対して地方の存在や魅力をアピールしているケースも見られます。
内閣府のアンケート調査(平成17年11月調査)によると、農山漁村地域への定住の願望について、「ある」あるいは「どちらかというとある」と回答した割合は、団塊世代を含む50〜59歳では3割近く(28.5%)となっており、30〜39歳(16.9%)、40〜49歳(15.9%)、60〜69歳(20.0%)、70歳以上(13.4%)など、他の世代と比較しても高い結果となっています。
また、ニ地域居住(平日は都市部で生活し、週末は農山漁村で生活すること)についても、「既に実践している」や願望が「ある」「どちらからというとある」という人の合計の割合が、50〜59歳では48.0%と半数近くを占めています。30〜39歳(35.8%)、40〜49歳(36.2%)、60〜69歳(42.1%)、70歳以上(29.2%)など他の年代と比較すると高い割合です。
この調査から、定住より二地域居住に対する願望が高いことや、30歳以降の年代別の傾向として、年齢層が上がるにつれ農山漁村地域への関心が高まり、50〜60歳代がピークとなって、70歳以上などの高齢層になると割合が減少しており、シニア世代の関心も年齢層によって異なっていることなどが分かります。
(三菱総研『団塊世代のUIターン』より)
農的生活とスローライフ
都会の生活がストレスフルで、人間関係の複雑さ、労働の重さに疑問をいだく若い世代の人達も増えています。「半農半X」という言葉の流行が示す「本当の生き方」は、自由に生きるためのライフスタイルとして模索が始まっていると言えるでしょう。