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098 オーガニック料理

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お知らせ

第1回 『オーガニック料理 仕掛人サミット』

DATE : 2007年6月17日(日)

今回初の企画となった「オーガニック料理 仕掛人サミット!」。過去有機野菜やマクロビオティックという特化した企画でイベントを企画、開催してきましたが、今回は「食」に関わる様々な角度からの意見や活動の実績を残されていらっしゃるゲストの皆様にご登場いただき、持続可能な「食」についてお話と料理教室を実施させていただきました。大人たちが、次世代を担う子ども達に正しい食を残せるのか? BeGood Cafeの得意とするサミット形式で、より自分にあった情報を手にして、感じていただくために講師の方にはそれぞれのお得意分野でのお話をしていただきました。

「食」を選ぶという事が個人から始まり、社会へと広がり、環境や資源の保護に繋がっていくという事を実感出来る時間となりました。料理教室のコーナーでは会場が美味しい調理の「音」と「匂い」で充満し、試食された来場者の皆様もお話以上に満足されたお顔で召し上がっていただきました。身体に心に優しい「食」の秘訣とは何かという事を感じられる一日でした。

BeGood Cafe TokyoビーグッドTALK−1
ゲスト:服部 幸應さん(学校法人服部学園 服部栄養専門学校 理事長・校長/医学博士)

最初にご登場いただいたのは料理の鉄人でも有名な服部幸應さん。内閣府の「食育推進会議」委員、「食育推進基本計画検討会」委員として、05年に施行された「食育基本法」の立法に尽力をされました。服部学園、服部栄養専門学校の校長としても次世代を担う「食」のプロの養成を通して日本での「食」のあり方について長年に渡り提言をされて来ました。
食育とは?という問いに対して多くの人が「親子料理教室でしょう」とか「農業体験でしょう」という声が多いとの事でしたが食育には「選食能力を身につける」「しつけ」「グローバルな視点で食料問題を考える」三つの柱があるという事でしたが、長年の調査から日本の食卓で本来幼少の頃から家庭において教えられるべきものが失われつつあるそうです。
その問題が六つの「こ食」と呼ばれるもので「個食」「孤食」「固食」「小食」「濃食」「粉食」の六つとの事。それぞれが何に起因し、実際家庭の食卓で何が起きているかと具体的な数字を示されながらお話いただきました。我々にとっては当たり前と思える事も現代社会においては崩壊しかけているという事に服部先生もかなりの危機感を感じられているという事でした。根本的に解決させていくためには地域社会、行政、教育、家庭がそれぞれできちんと状況を把握し、取り組んでいかなくては取り返しがつかないと、子どもが習慣として「食」を学ぶには3歳から8歳の間でどの程度「食卓」を囲む時間を過ごせるかという事が重要とのお話でした。

最後に食卓を照らす照明を蛍光灯から白色灯に変える事が大切だとおっしゃいました。いい雰囲気を作り、温かな食事の色が与える影響は「免疫力」も上げるそうです。そのための環境作りから家庭で始めて欲しいという期待を込めての締めくくりとなりました。「食」を持続する事の難しさは誰もが感じる事でしょう。特にこの現代社会において忙しさに飲み込まれる毎日おいては。ただこの原点に立ち返る事で社会を今後担う子ども達が精神的、身体的にも健康に成長していくのだと改めて感じさせる内容でした。

BeGood Cafe TokyoビーグッドTALK−2
ゲスト:和田 一彦さん([株]亀和商店 代表取締役社長)

MSCとは、(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)です。
ある特定の条件を満たした、魚や貝、エビ、カニなどの海産物製品にのみ付けられるものです。特定の条件、とは、海の環境を保全しながら、天然の海産物の持続的な利用を実現する、ということ。国際的な第三者機関であるMSCは、このような資源・環境配慮型の漁業を認証する「認証機関」を世界各地で認定し、MSCのマークが付けられた製品は、それが海の自然を守って作られた製品である、という証となるそうです。
海洋資源も海は広大だから尽きる事なんてないだろうと思われがちではありますが、実際に欧米や中国での食習慣の変化が予想以上に大きく、種によっては収量が激減しつつあると言う事も実際に起きつつ有るとの事。その為に資源保護運動の盛んなアラスカ州ではサーモンなどの品種についてはこのMSC制度というものが定着し、資源管理、漁法などが厳密に管理されているそうです。

環境では最近は保護や再生運動という事が注目をされていますが、一度失われた資源は取り戻せないという事を改めて感じさせるお話でした。日本も過去の食習慣として魚を当たり前のように食べてきていますが改めて世界ではより早い速度で変化が起きていると感じさせる内容となりました。

BeGood Cafe TokyoビーグッドTALK−3
ゲスト:境 眞佐夫さん(泥武士、株式会社風.. 代表取締役)

銀座という日本でも有数の飲食施設の競合地で超こだわりのレストラン「泥武士」を運営する境さん。一見強面で威圧感のある存在ですが、境さんの安全な食に対する思いは他に類を見ません。若い頃にアメリカで体験されたオーガニックのハッピーな、眩しさを表現していらっしゃいます。アメリカのオーガニックは「明るいんです。」という言葉に日本ではまだまだ「粗食」と取られがちな現状を何とか変えていきたいという思いに気持ちの強さを感じました。
「食」がテーマになるとお顔に満面の笑みを浮かべながら素材の物語や、正しさをお話されると思わず納得せずにはいられない何かがありました。「食」を楽しみだと捉えられる境さんは「見栄え」「完成度」にかなりの意識で「お洒落さ」を要求するとお話になりました。
文化としての食を考えるならば、これを食べては駄目という価値観より、何を食べればより「楽しく」「明るく」「ハッピー」になるかと言う事をより深く追求されていらっしゃいました。このお話を聞いているとやはり多様性を認め、否定するというネガティブなマインドよりも、より身軽な気持ちで食を選んでいけるという気持ちになりました。一見簡単なようなようですが、これはなかなか実践し得ないということは、銀座という世界にも類を見ない食の発信地で既に展開出来ていらっしゃる事自体が何よりも雄弁にこの姿勢を物語っていると思います。
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熱いトークの後には銀座で腕を揮われるシェフの方が登場され料理の実演もありました。やはりこだわる境さんはこのシェフの方を選ばれたきっかけも、経験より「格好良さ」や「思い」であったそうです。作っていただいたお料理は「キャベツのコールスローサラダ」「野菜のペパロンチーノ」。手際良く包丁を扱われる姿を見て「かっこいい」という言葉がすぐに浮かんできました。来場者の中からアシスタントの作業も選び、ライブ形式で料理を作っていただきましたが、音や匂いが会場に響き、広がり、食べて安心、満足、そして美味しいという満足度の高い一時でした。

BeGood Cafe TokyoビーグッドTALK−4
ゲスト:河名 秀郎さん([有]ナチュラルハーモニー代表)

過去数回ご登場いただいた河名さんでしたが、今年新たにナチュラル&ハーモニック・プランツ銀座をオープンされました。今回も独自の世界観を様々な情報と共にお話いただきました。
自然界には本来自然が作り上げてきたバランスがあり、有機やオーガニックであっても結果としてその世界の調和を崩してしまうんです。というお話には少なからず驚きを感じました。
過去20年以上に渡って「無肥料栽培」を実践されてきた経験から「人間が肥料を使うことが早く育てる為の手段であり、エゴなんです。」その弊害として窒素肥料過多のほうれん草や小松菜を離乳食で摂取した赤ちゃんが死亡したという例を挙げてられました。「有機」「オーガニック」が必ずしも絶対の安全とは結びついていないという実例も自然食品店と呼ばれ「無添加」「無農薬」と謳っていながらも公然と添加材を使用した食品を扱っているという現状に大きな危機感を感じているというお話に来場者も思わず不安気に聞き入っていらっしゃいました。

BeGood Cafe Tokyo無肥料栽培で育てられた野菜と有機肥料を使って育った野菜で、素材をそれぞれ瓶につめて保存するという実験をしたところ、無肥料の野菜は干涸びて枯れてしまい、有機肥料の野菜は腐ってどろどろに溶けて最後は水のようになってします。この栄養過多の状態を実際にスライドで映し出すことで実感をさせられました。果実などは腐らずに発酵していくものこそが本来の姿であると。結果として人間の効率や儲けを得るために肥料を用い恩恵を受ける与えるということは言うまでもなく、その肥料が虫や病気を呼び、その為に薬剤をまいてしまうという悪循環が起きてしまっている。
過保護に人が手を加えるのではなく土本来の性能が蘇り生命力の高い野菜が育っていき、それが命をつなげていくことを改めて実感するお話でした。一県一店舗的なペースで全国に生活全体の繋がりが分かる様な店舗を広げていきたいというチャレンジがいつか実現することをおおいに期待したいものです。

BeGood Cafe TokyoビーグッドTALK−4
ゲスト:清野 玲子さん([有]ダブルオーエイト、[有]カフェエイト主宰)

デザイナー、アートディレクターとしてカフェプロデユースを手掛けていらっしゃる清野さんの料理に対してのコンセプトは「お洒落」。ご自身の食事の嗜好からハンディキャップを埋めるためにデザインされ、独自の表現で展開をされていらっしゃいます。そもそもは飲食のプロでは無かったそうですが、「デザインの世界だけに固執せずにそこから得たノウハウを得意技としてのデザインを使い、お金をためて好きなことをやるという姿勢からカフェエイトとしての活動の根底を築いてきた。」というお話の中からも清野さんの独特の世界観がひしひしと伝わってきました。
現在にもつながるメニューのコンセプトはご自身のヴィーガンという嗜好もあったそうですが、気張らずに素材を吟味して行った結果としてそぎ落とされた野菜中心のメニューということでした。一見華やかに都会の一等地で活動を続けていらっしゃる背景には確かな意志というものが存在するということを改めてお話の中から実感をしました。
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「結果としてそぎおとされたという考えがよりシンプルで安全で楽しいものであるのではないでしょうか。」という考えがトータルにデザインされたカフェエイト、ピュアカフェという店舗で表現されています。過去に動物性の食材を使うことや、過剰な包装をしないとコンセプトを建てて行くことを敢えて声を上げていませんでした。逆にそれをすることで周りから疎まれたり、非難されたこともあったということが日本のオーガニックの進歩性を端的に表しているとおもいましたが、ここに来てようやく時代がそれを許すようになったんです。というお話にこれからのますますハッピーで、お洒落で、楽しい食の表現を期待したいと思います。


Green Rock ゲスト:Yaeさん(半農半歌手)

BeGood Cafe Tokyo 母として女性として独自の世界観を表現され続けるYaeさん。「生きる」こと「食べる」ことを伝えていきたいというお気持ちがこの世界に入るきっかけとなったそうです。

「土」に触れる暮らしをご自身でも始められていらっしゃって二足のわらじで「農」と「歌」を表現しているんだと謙遜めいてお話になられていますが、その根底にはやはり強い信念を感じました。

カイさんの優しいギターの音色、飛び入りで参加した熊さんのパーカッションと掛け合いながらの唄の一曲一曲に感情が高まる一時でした。「種まき大作戦」も期待大です。

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BeGood Cafe TokyoビーグッドTALK−6
ゲスト:南 清貴さん([株]グリーンハウスキヨズキッチン事業室チーフプロデューサー)

95年から代々木上原「キヨズキッチン」を運営されてきた南さん、ご本人のお人柄は「ぶれない」「柔らかな物腰」という印象を以前から感じていましたが、今日のトークにご出演いただいても南さんのお人柄の良さというのが十分に伝わってきました。
世の中が今のようにオーガニックという情報が手に入りにくい時代に先駆けて展開をされてきた確信がお話の中から溢れ出ていました。当時から画期的なお店ではあったそうですが、先駆者としての様々なご苦労も経験されたそうです。様々なデータを基にご自身の活動についてお話されましたが、一食一食おろそかにしない社会であってほしいという信念を外食産業に従事されながらも食は「家庭」に有ると断言なさる姿勢に強い思いを感じました。
外食というものは文化として大変素敵なものではあるが、やはり原点としてはいい素材を選ぶ目や舌は個人が高い意識を持って始めて形づくっていけるという事からご自身の料理のレシピは全て公開もされてきているそうです。狭い世界にとらわれずに社会がより幸せで、楽しいものであるためにこれからの子ども達に向けて学校給食を手掛けていきたいという夢も語っていただきました。

次世代を担う子ども達に向けてより「ハッピー」な食事をより大きく手掛けていっていただきたいと更なる期待を感じました。日本の食料自給についても数値を基にお話になりましたが、現状を認識し、社会をより啓蒙し国としての単位として体制を整えていかなければ取り返しがつかなくなってしまう。その意味でBeGoodのような情報発信に期待値がとても高いと述べていただきました。

BeGood Cafe TokyoビーグッドTALK−7

イベントの最後にはご登場されたゲストの皆様に一同に並んでいただき、それぞれのチャレンジについて述べていただきました。
時代に即した活動をそれぞれが独自にやって来た事がこれからは繋がりを持っていくというご意見が大半でした。
多様性を認めながら、素材の選び方や、原料として作られてくる過程を消費者がきちんと情報を得ることこそ、これからのオーガニックが広がっていくためのキイワードとなると改めて実感をしました。次代を担う子ども達への確かな「食」について。
40%を切ったと言われるこれからの日本の「食」のあり方について。自分自身の生命や家族、社会の生命を守るための「食」のあり方について。さらに先頭にたって情報を集めて、実践し、広げていかなくてはとかんがえさせられる一日となりました。

ゲストプロフィール

■服部幸應さん
学校法人服部学園 服部栄養専門学校 理事長・校長/医学博士

服部幸應東京都出身。立教大学卒。昭和大学医学部博士課程修了。内閣府「食育推進会議」委員「早寝・早起き・朝ごはん全国協議会」副会長。食育を通じた生活習慣病や地球環境保護に取り組んでいる。藍綬褒賞及び仏政府より国家功労勲章並びに農事功労勲章を受章。各種メディアでも活躍。著書に「食育のすすめ」「大人の食育」「食育の本」など多数。
http://www.hattori.ac.jp/

■境眞佐夫さん
株式会社風.. 代表取締役

境眞佐夫熊本市出身。大学卒業後5年間の米国料理修業を経て、82年熊本市にデーブスレストランを開店。93年の泥武士開店以降、農薬や添加物についての啓蒙とともに、オリジナル商品の開発・提供を開始。99年より東京進出、泥武士銀座店を出店。
http://www.dorobushi.com/ginza/

■南清貴さん
(株)グリーンハウスキヨズキッチン事業室チーフプロデューサー

南清貴95年代々木上原にキヨズキッチン開業。最新の栄養学“オプティマル・ヒューマン・ダイエット”に基づく独自の料理を提供。06年[株]グリーンハウスのキヨズキッチン事業室チーフプロデューサーに就任。「ナチュラルエイジング」をキイワードに、コントラクトフードやヘルスケア・ホテル部門でのフードメニュー開発を開始。
http://www.kiyos.jp/

■清野玲子さん
(有)ダブルオーエイト、 (有)カフェエイト主宰

清野玲子アートディレクター、カフェプロデューサー。97年に友人の川村明子と2人でデザイン事務所(有)ダブルオーエイトを立ち上げ、00年にカフェエイトを、03年にピュアカフェをオープンさせる。ADとカフェ経営の2足ワラジ状態ではや7年。カフェエイトのレシピ本『VEGE BOOK』も好評発売中。
http://www.cafe8.jp/

■河名秀朗さん
(有)ナチュラルハーモニー代表

河名秀朗自然との調和を感じるためには「土」に直接触れることが大切と確信し、1年間の自然栽培実施農家に住込みによる研修を経て、「土」の偉大なる力を反映した農産物の販売を始める。
「衣・食・住・遊・学」のすべての面にわたってナチュラルなライフスタイルを提案している。
http://www.naturalharmony.co.jp/

■和田一彦さん
(株)亀和商店 代表取締役社長

和田一彦成蹊大学経済学部卒業後、90年(株)亀和商店入社。00年代表取締役社長に就任。06年4月(株)亀和商店は、日本国内で初の海洋環境保全、持続的な海洋資源の利用を推進するMSC認証の流通・加工でのCoC認証を取得。
http://www.kamewa.co.jp/
http://www.kiyos.jp/