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089 水俣病公式確認50年

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BeGood Cafe Tokyo Vol.90

『水俣病公式確認50年』
DATE : 2006年05月21日(日)

今年は、水俣病が公式に確認されて50年となります。
世界に衝撃を与えた公害「水俣病」は、日本経済が敗戦から復活を計っていく時代に切り捨てられた暗部だったと言えます。やがて世界中の途上地域でも同様の公害は広がり、現在も深刻な事態が続いているのです。
「水俣」ってなんだったのか、そしていま産廃問題で揺れる水俣市についても語っていただきます。水俣病は、終わっていません。

[ ゲスト ]
土本典昭 土本典昭さん
記録映画監督

 

辻 信一 辻 信一さん
明治学院大学国際学部教授、ナマケモノ倶楽部世話人

 

高倉敦子 高倉敦子さん
ガイア水俣代表

 

松原香苗 松原香苗さん
AnandaYogaSharing(アナンダヨガシェアリング)

 

ゲスト プロフィール詳細


ビーグッドTALK-1 映画『水俣病その20年』
ゲスト:土本典昭さん(記録映画監督)
BeGood Cafe Vol.89『水俣病公式確認50年』特に若い世代にとって、水俣病は社会科の教科書で公害の象徴としてその名前を見聞きした程度で、遠い出来事であることが多いでしょう。この『水俣病その20年』を見て、水俣病というものがどういうことだったのか、あまりに知らなかったことに気づきました。動画というかたちでスクリーンに映し出される、患者の方々の苦しみや、認定や補償をめぐる患者団体とチッソとの激しいやりとりに、来場者はみな食い入るように見入っていました。

『水俣病その20年』の監督である土本さんをお迎えし、記録を続けるなかで感じていたことなどをお話しいただきました。

「当時は自分が患者であることを、みな口に出せなかった。公になれば魚が危険だということで魚を売れなくなるし、チッソという会社もダメになる。患者であることを言うと差別を受けてしまうから。」そんななか、患者たちはチッソや国、行政へ謝罪と賠償を求めていきます。「水俣病であることを訴えれば訴えるほど、自分たちが人間として扱われていないことに気づいていくんです。それは、本質的には今もかわっていない。まだ、終わっていないのです。」土本さんは、この映画を誰にいちばん見て欲しいと思って撮ったのでしょうか。「いちばん水俣の人たちに見せたかった。いろいろなところで上映をしましたが、アカだ、患者のまわし者だ、とよく言われましたね。」

水俣湾周辺漁村で原因不明の患者が現れ、厚生省が水俣病を公害病と認定する1968年まで、15年。そこから始まるチッソや国、熊本県への責任と賠償を求める第三次にまでわたる訴訟、そして1996年に和解協定書に調印するまでの間にも、「水俣奇病」「ニセ患者発言」など、水俣の人々は差別と偏見、風評被害のなかで本当に長いあいだ戦ってきました。当時の状況のなかで、こうした事実を記録し続け、それを上映するということは、どれほど困難なことだっただろうと思います。その記録が、こうして今の私たちにその事実を伝えてくれることに、感謝の想いでいっぱいになります。

ビーグッドTALK-2
ゲスト:辻信一さん(明治学院大学国際学部教授、ナマケモノ倶楽部世話人)、高倉敦子さん(ガイア水俣代表)

辻信一さんは、水俣病闘争のリーダーとして活躍した緒方正人さんの聞き書きをされています。はじめに緒方正人さんのインタビュー映像が流れました。
『水俣病を「忘れない」、とよく言っていました。忘れない、というのは恨みの記憶の仕方。私はいつしか自分自身も、もうひとりのチッソではなかったか?という問いに変化しました。そして、チッソは私であった、という想いに変化したのです。それは、チッソ的社会の一員であるということ。プラスチックや電化製品などに囲まれた生活をしているわけですから。誰もが加害性を持っていて、被害者さえも罪を背負う。そういう時代であるということの衝撃でした。』

『水俣病闘争は、(ふりかえってみると)お金だけ解決すればよい、という構造になっていた。患者運動自体がそういう社会の構造と同じ構造の中に投げ込んでしまったのかもしれない、というジレンマに陥りました。』

「チッソは私であった。」ということから言うと、水俣病は終わっていない。それどころか、いよいよこれからである、ということをいちばん言いたい、と辻さん。「今、青森県の六ヶ所村で日本原燃が放射能を海に放出している。水俣病のときと違って、今はそれを原燃も公表しているし、私たちも知っています。これは一体何なのか?と思います。日本原燃は私である。水俣のときと同じ、何もかわっていない。原燃型社会を私たちがつくってきたのではないか。いま、原燃について考えることが水俣について考えることだと思います。原発がなくても生きていけるということを一人ひとりが示し、脱原発社会を始めなきゃいけないんです。私の言葉で言うと、それはスローライフスタイルです。」

26年前に東京から水俣へ移り、ガイア水俣という団体をつくり水俣の人たちの支援活動をされている高倉敦子さん。「漁業がだめになって、人々は丘にあがって甘夏をつくり始めました。けれどそこで農薬を使えば海を汚し、自分も汚すことになる。だから農薬を減らして栽培しています。運動をしながら食べていく、ということが活動のテーマです。」ガイア水俣では甘夏マーマレードをつくって販売しています。水俣を復活させようと、水俣市は環境モデル都市として様々な取り組みをしています。そんななか、現在は休止状態ではあるけれど、水源地である山林に産廃処分場の計画がもちあがったそうです。「産廃はいらない、という活動を市もいっしょにやるような動きになっています。いらないと言うだけでなく、産廃がいらない社会にするために、一人ひとりがそういう暮らしを示していくしかないですね。」

水俣病とは何であったか。患者一人ひとりの人生に起こった出来事として見たときに、それはどういう事実であったのか。単に「公害病のひとつ」としてではなく、そこに生きる人たちの想いや人生、また海や生きものの苦しみに想像をはたらかせ、どれだけ自分の身に引き寄せたところで水俣病という事実を捉えるか。そして、そこから自分の日々の暮らしに活かしていくことこそが水俣病から学ぶことなのだど、未来へ繋げていく道すじが見えたように思いました。

SMILEワークショップ – 1
水俣写真展
BeGood Cafe Vol.89『水俣病公式確認50年』
「水俣」の事実を映し出す貴重な写真の展示。

SMILEワークショップ – 2
AnandaYogaSharing (アナンダヨガシェアリング)
講師:松原 香苗さん
BeGood Cafe Vol.89『水俣病公式確認50年』「ヨガはなんのためにやっているのか?その究極の目的は、自分が誰なのかを知ること。」という松原さんの言葉でワークショップが始まりました。松原さんを中心に、みんなで車座になって座り、ゆったりと静かなワークになりました。

最近は体を動かすヨガが流行っていますが、それは多様なヨガの一面です。
インドのヨガには多様な面があり、様々な形があります。
楽器を演奏したり、歌を歌うチャンティングや、瞑想をすること、体を柔軟にし心身のコントロールを身に着けるハタヨガ、プージャ(火の儀式)、行動のヨガなど・・・

インドの伝統の中ではそれら全てがヨガです。
ヨガをすることは”Who am I?”「私は誰なのか」という究極のゴールを探す旅です。人の個性がそれぞれ違うように、そのゴールに向かう道もそれぞれ違うはずです。

BeGood Cafe Vol.89『水俣病公式確認50年』
先生から一言

私のヨガの先生は「”Yoga is sharing” ヨガは分かち合うこと」と言っていました。それとAnanda(幸せ)をとってAnanda Yoga Sharing【アーナンダヨガシェアリング】と名づけた会を定期的に開いています。シェアリングでは様々なヨガを通して、それぞれの道を見つけていければいいなと思い、いろんなスタイルをミックスした形です。


SPEAK OUT

アネモネ
ロックンロール#9 を披露してくれました。憲法9条をテーマに、力のある言葉から強いメッセージとエネルギーを感じます。「俺たちは人殺しのこども」という言葉が胸に深く残ります。

NPOインフォメーション

ワールドリポート 森田玄さん
日本ではなかなか報道されないアメリカの最新ニュースの紹介をしていただきました。

ピースメディア塾
2004年度からBeGood Cafeのプロジェクトとして始まったメディアリテラシーの勉強会。第3期生の方がその活動の様子を報告してくれました。

GREEN ROCK

BeGood Cafe Vol.89 GREEN ROCK / じぶこん
”じぶこん”

大地、空、海、樹・・・自然に満ちあふれた「じぶこん」の「唄」「ヴィオラ」のメロディーが宙を舞い「ディジュリドゥ」「ギター」「ベース」「ジェンベ」のリズムが踊る5人組トライバルポップスバンドです。

フルメンバーの5人が勢ぞろいして、新曲も披露してくれました。どんなものもまるごと受けとめてくれるような、その懐の深い音を聞いていると、理屈抜きに元気をもらいます。

■スケジュール 2006年5月21日(日) 14:00-20:00

14:20-15:00 SMILEワークショップ (ナチュロパシック・ヨーガ)
15:10-15:20 SPEAK OUT!
15:20-15:35 NPOインフォメーション
15:35-15:45 ワールドレポート
15:45-16:00 ピースメディア塾
16:15-17:00 映画『水俣病その20年』
17:00-19:05 ビーグッドTALK
19:20-19:50 LIVE

■会場 代官山Ball Room
代官山BalRoom map
東急東横線代官山駅より徒歩1分
JR/日比谷線 恵比寿駅より徒歩8分
渋谷区恵比寿西1-34-17 ZaHOUSEビル
代官山Ball Roomへのアクセス
※お車でのご来場はご遠慮ください

■料金(出入り再入場可)
一般1,500円(または1,000円+500地域通貨*)
ビーグッドカフェ会員1,000円
小学生以下無料
地域通貨*=Rainbow Ring、アースデイマネーが使えます。
BeGood Cafeでは試験的に使用済み天ぷら油の回収を行っています。
ご協力いただける方は、ご自宅から天ぷら油をペットボトルに入れてご持参
の上、アースデイマネーのブースにお渡しください。
地域通貨「アースデイマネー」を差し上げます。
(廃食油リサイクルプロジェクト/アースデイ東京2006 VDFプロジェクト)

■お問い合わせ
・BeGood Cafe/03-5773-0225

司会:シキタ純、市川美沙 制作:カナシロリエ VJ:TOOWA2 DJ:TeL ATSUSHI
主催:BeGood Cafe
特別協力:NPO法人水俣フォーラム
協力:ASADA(Airlab)

★Thank you for not smoking 会場内は禁煙です。

ゲストプロフィール

■土本典昭さん
記録映画監督

1956年岩波製作所に契約者として映画の仕事に入る。国鉄PR映画として企画された『ある機関助士』で監督デビュー、綿密なコンテと描写で高い評価をうける。『ドキュメント路上』『シベリア人の世界』『パルチザン前史』を経て70年代より水俣映画の連作を製作し続ける。1977年には不知火海・巡海映画班として100日間不知火海沿岸の133集落、99箇所で上映会。最新作は2004年『みなまた日記ー甦える魂を訪ねて』。他の作品に『はじけ鳳仙花』『原発切抜帖』『よみがえれカレーズ』などがある。

■辻信一さん
明治学院大学国際学部教授、ナマケモノ倶楽部世話人

文化人類学者、環境運動家。明治学院大学国際学部教授。 「100万人のキャンドルナイト」呼びかけ人代表。NGOナマケモノ倶楽部の世話人を務める他、数々のNGOやNPO に参加しながら、「スロ−」というコンセプトを軸に環境=文化運動を進める。

■高倉敦子さん
ガイア水俣代表

1954年埼玉県秩父市に生まれる。26歳の夏、旅の途中で突然水俣に導かれ、そのまま住みつく。全国から集まった支援者とともに共同生活を送りながら、患者のひとたちの手伝いにあけくれる。その後仲9人で「ガイアみなまた」を設立、水俣病で苦しむひとたちとともに有機栽培の甘夏みかんを生産・ 販売し、全国に送り届けることを柱としている。