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085 大地の力、天空の智慧

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BeGood Cafe Tokyo

『大地の力、天空の智慧』
自然と宇宙を見つめ、大地に根をはやした生き方を
DATE : 2006年01月22日(日)

BeGood Cafe Vol.85 『大地の力、天空の智慧』自然と宇宙を見つめ、大地に根をはやした生き方を「アースダイバー」を刊行したばかりの中沢新一さんが、縄文から連綿と続く東京という土地の新しい人類学的捉え方について語り、写真コラージュの奉納曼荼羅を制作中の写真家今井紀彰さん、熊野の那智の滝で奉納演奏を行ってきた音楽家岡野弘幹さんと共に『大地の力、天空の智慧』というテーマにトークが弾みました。

[ ゲスト ]
中沢新一 中沢新一さん
宗教学者、思想家

 

今井紀彰 今井紀彰さん
写真家

 

岡野弘幹 岡野弘幹さん
音楽家・プロデューサー

 

ゲスト プロフィール詳細


ビーグッドTALK-1
ゲスト:今井紀彰さん(写真家)

BeGood Cafe Vol.85 『大地の力、天空の智慧』自然と宇宙を見つめ、大地に根をはやした生き方を今井さんは、人や風景などを捕った写真をコラージュのようにして曼荼羅をつくってらっしゃいます。「あるとき突然、写真で曼荼羅をつくりたいと思いました。インドでチベットから亡命してきた大学の先生に会ったときに曼荼羅を学びたいと話したら、曼荼羅は学んでも難しくてわからない、つくることも曼荼羅のうちだ、と言われたんです。それで、フィルムを裏焼きしてプリントし、4枚1組で組みあげて曼荼羅をつくるという今のスタイルになっていきました」

「丸いものと四角いものに惹かれます。丸いものというのは、自然がつくるもの。四角いものというのは現代の人間がつくるものとして捉えられます。曼荼羅というのは、丸いものと四角いものが順々に包み込んでいくようになっていますが、それは人間が自然を包もうとする、それをさらに自然が包み、またそれを人間が包もうとする・・・という繰り返しで、この繰り返しが文明を表しているように思えるのです」

BeGood Cafe Vol.85 『大地の力、天空の智慧』自然と宇宙を見つめ、大地に根をはやした生き方を

今井さんは曼荼羅のほかにも、コンクリートで恐竜をつくることもしています。

「街の原料となっているコンクリートって何でできているんだろうと調べてみたら、ジュラ紀のころの地層にある原油でできているんだということがわかりました。つまり、恐竜のエッセンスでできているわけです。都市ってリアル・ジュラシックパークじゃん!って思いました。いのちのかたまりが詰まっているんです。しかもジュラ紀限定のいのちの上に都市が立っている。それで、一度コンクリートで恐竜をつくりたいと思い始めて、ある工事現場でそれをやらせてもらうことができました」

そのときの写真を見せてもらいましたが、工事現場になんともかわいいコンクリートの恐竜ができあがっていました。しばらくはそのままにしてもらえたとのことで、道を歩く小学生や近所の人にも評判で、撤去するときには惜しまれたそうです。

ビーグッドTALK-2
ゲスト:中沢新一さん(宗教学者、思想家)
BeGood Cafe Vol.85 『大地の力、天空の智慧』自然と宇宙を見つめ、大地に根をはやした生き方を
『アースダイバー』を書くことになったきっかけからおうかがいしました。「東京に暮らして長いんですが、ずっと変な街だと思っていました。あるとき、東京というのは巨大な聖地だと感じたんです。聖地の感覚を研ぎ澄ますことで、東京の深い部分を蘇らせる仕事ができたらと思ったのが、『アースダイバー』を書くきっかけになりました。」それから、中沢さんは「日本製でママチャリ」というこだわりで自転車でフィールドワークを始められたそうです。東京の細かい道を自転車や徒歩でめぐるうちに、すっかり東京への愛が復活したといいます。

「人類学というのは、空間は均一ではないというのが認識の出発点です。一人ひとりの人間が生きている世界は微妙にちがう質感をもっていて、それらが複雑に組み合わされてできている世界を生きている、ということを認識する学問なんです。そういう感覚を東京に適応できないかと以前から考えていました。そういう視点を持って渋谷や新宿といった東京の盛り場を歩いていて、共通点があるように感じました。いったいなんだろうと探っていくと、縄文時代と現在で、東京の地形の構造が対応していることに気づいたわけです」

これが『アースダイバー』の巻末についている、「TOKYO EARTH DIVING MAP」です。縄文時代の東京は、人間の脳みそのようなフィヨルド地形になっているのがわかります。

「この地形に多くある、水際のところの斜面というのが重要です。水の世界と陸の世界では縄文時代の人間にとってはすごく大きな違いを持っていました。水の世界というのは死者の霊が行くところで、また未来に生まれてくる生命が宿っている場所と考えられていました。そういう場所が何千年ものあいだずっと聖地とされてきて、まだ未開地に近かった徳川家康のころまでずっとそうでした。江戸に都市をつくるときも昔の聖地はそのまま残され、神社やお寺が残りました。その後、明治維新、太平洋戦争の大空襲、そして高度成長期の土地の大改造を経ても、東京の基本的な構造が変わらなかったというのは、本当に驚きなんです。つまり、東京という都市は確かに人間がつくったのですが、自然がつくりあげた要素を自分の中に取り入れて、ふたつの要素を組み合わせてできあがったんです。それは政治の組織や経済の組織もそうで、そういう組み合わせ方が日本の文化をつくってきたわけです。東京というのは、そういう日本の文化のまさに典型なんです」

東京というと無機質で自然も少なく人間味がないと思いがちでしたが、実は縄文の時代から人々が無意識に本能的に感じ取ってきた自然のかたちがそのまま都市の構造に生きている、大地の力が生きている街なのだなと、東京を見る目がガラッとかわるお話でした。

ビーグッドTALK-3
ゲスト:今井紀彰さん&中沢新一さん&岡野弘幹さん
BeGood Cafe Vol.85 『大地の力、天空の智慧』自然と宇宙を見つめ、大地に根をはやした生き方を
岡野さんは熊野にある那智の滝の前で奉納演奏をされました。

「熊野は自然の力がすごいところです。地元の人が信仰している岩とかがあって、ほかにも地元の人しかしらないところがたくさんあります。熊野や吉野、高野山のあたりは、ネイティブ・インディアンの自然への信仰と似たものを感じます。奉納演奏のときは、まさに地球にダイブしている感覚でした。滝の岩盤に音がぶつかって、それが返ってくるんです。山全体が音のかたまりのようになって、音が降ってくるようでした。まさに自然が神様、地球は祭壇なんだと思いました」

GREEN ROCK

BeGood Cafe Vol.85 GREEN ROCK / 岡野弘幹 ”岡野弘幹”

那智の滝での奉納のときに演奏した曲を演奏していただきました。大地と天空に感謝を捧げるその音を聞いていると、そこが大自然の中のような感覚になり、大自然と神と人間が共演しているように感じました。

SMILEワークショップ
ヴェーダ・ヨーガ(ヴェーダセンター)

ヨガマットを持ってきた方も多く、会場中がヨガ教室になりました。スタッフもいっしょになってゆったりとした時間をすごしました。

BeGood Cafe Vol.85 『大地の力、天空の智慧』自然と宇宙を見つめ、大地に根をはやした生き方を

SPEAK OUT!
BeGood Cafe Vol.85 『大地の力、天空の智慧』自然と宇宙を見つめ、大地に根をはやした生き方を

絵本「ゆめにでてあげたい」の朗読
金澤みゆきさん

チベット亡命政府のあるダラムサラ村。たった一人の家族の弟と9歳の僕はヒマラヤを越えてやってきた。誰かと誰かの意地の張り合いで戦争が起きて、暴力が蔓延している。そして誰かがそれで苦しんでいる。家族と離れ離れになって苦しんでいる世界中の子どもたちに“君は一人ぼっちじゃないよ”と言ってあげたい。どんなにつらく苦しくても、自分の大切な人には幸せになってほしいと願う少年がすてきでした。

NPOインフォメーション

KIKU:チベットサポートグループ
久保さん
「Escape Over the Himalaya」上映
BeGood Cafe Vol.85 『大地の力、天空の智慧』自然と宇宙を見つめ、大地に根をはやした生き方を
ヒマラヤを越えて亡命するチベット難民を追ったドキュメンタリー。どうして数週間もかけて亡命しなければいけないのか、そして亡命政府の子どもたちの村の様子が描かれています。KIKUでは里親制度やチベットサポートグッズを売って、ヒマラヤを越えてきたところにある受け入れサンターでの医療費などに充当しています。

那智勝浦役場観光課
BeGood Cafe Vol.85 『大地の力、天空の智慧』自然と宇宙を見つめ、大地に根をはやした生き方を
「日本の絵解き」サミットが明治大学アカデミーホールが行われました。
かつて絵解きというのは、人生観や世界観を醸成する重要なビジュアルコミュニケーションの手段・方法であったそうです。この絵を解くことで熊野の魅力がもっとわかってもらえるということです。

■スケジュール 2006年1月22日(日) 13:00-19:00

13:30-14:15 SMILEワークショップ (ヴェーダ・ヨーガ)
14:30-14:45 SPEAK OUT !
14:45-15:05 NPOインフォメーション
15:20-16:20 ビーグッドTALK- 1
16:35-17:45 ビーグッドTALK- 2
18:00-18:45 LIVE(岡野弘幹)

■会場 パナソニックセンター
パナソニックセンター map
りんかい線国際展示場駅(渋谷駅からJRで1本)下車徒歩2分
ゆりかもめ有明駅 下車徒歩3分
※お車でのご来場はご遠慮ください
東京都江東区有明2-5-18
http://panasonic.co.jp/center/access.html

■料金(出入り再入場可)
一般1,500円(または1,000円+500地域通貨*)
ビーグッドカフェ会員1,000円
小学生以下無料
地域通貨*=Rainbow Ring、アースデイマネーが使えます。

■お問い合わせ
・BeGood Cafe/03-5773-0225

司会:シキタ純、市川美沙、川村むつみ VJ:TOOWA2
主催:BeGood Cafe
共催:松下電器
協力:パナソニックセンター
協力:ASADA(Airlab)
企画協力:金澤みゆき

★Thank you for not smoking 会場内は禁煙です。

ゲストプロフィール

■中沢新一さん
宗教学者、思想家

1950年山梨県山梨市生まれ、1977年東京大学大学院人文科学
研究科宗教学専攻修士過程修了。1979年、ネパールへ赴きチベット僧につき密教の修行を積む。帰国後東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助手。
1983年、『チベットのモーツァルト』の刊行により、いわゆる「ニューアカデミズム」の旗手の一人と目される。インド、中国ほかへのフィールドワークを続ける傍ら、宗教学、民俗学、現代思想など多肢にわたる著作を刊行。
1993年より中央大学総合政策学部教授。
2006年4月より多摩美術大学芸術人類学研究所を創設。所長として日本初の新しい学の確立をめざす。
主な著書:「アースダイバー」(講談社)、「カイエ・ソバージュ全5巻」(講談社選書メチエ)

■今井紀彰さん
写真家

石川県金沢市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。
2002年度、第5回岡本太郎賞準大賞の注目作家。第24回キヤノン写真新世紀優秀賞、第5回岡本太郎記念現代芸術大賞準大賞を受賞。また「天人戯楽:大野一雄の世界」など写真集やサザンオールスタズのライブビデオの撮影など、現代アーティストとして多彩な才能を発揮している。2005年7月に「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコ世界遺産に登録された、熊野古道を題材にした写真集「熊野詣」を発表。
古来信仰を集めてきた霊場・熊野の壮大な風景写真を、古今東西の著名な哲学者や文筆家の詩文とともに紹介した。
現在2006年春、熊野本宮大社に奉納する熊野現幻曼陀羅を製作中。

■岡野弘幹さん
音楽家・プロデューサー

音楽家・プロデューサー・天空オーケストラ代表   ’87よりソロ音楽活動を開始。’90年ドイツのレコード会社IC DIGITと専属契約を結び、アルバムの全世界発売に至る。日産自動車エコカーCM曲やテレビ番組、映像 作品の音楽なども多数手がける一方、環境や平和をテーマにしたイベントを積極的に開催し演奏するなど、エコロジカルな文化のリーダーとしても活躍中。天河大弁財天社、熊野本宮、速玉大社、那智大社など、全国の社寺での奉納演奏や、「天空オーケストラ」「風の楽団」でのバンド活動も積極的に継続している。