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099 極楽エコ住宅

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お知らせ

『極楽エコ住宅のつくり方』
 エゴから始まるエコ

DATE : 2007年9月30日(日)
[ 共催:(株)チームネット ]

今、みなさんはどんな家に住んでいますか? その家に満足していますか? 
立地の利便性やかっこよさよりも、本当に快適な住まいを手にいれたい!
できれば自分にも環境にも優しい家がいいけど、それはワガママ?
いいえ、「エコ」と「エゴ」は共存可能なのです!
素敵なゲストのみなさんから実現のヒントをいただきました。 

BeGood Cafe TokyoビーグッドTALK−1
ゲスト:高樹 沙耶さん(女優)

2002年にフリーダイビング競技で53mという日本記録を樹立、海と自然の似合う女性というイメージですが「バブルの頃は先頭を切って踊っていました」という高樹さん。ターニングポイントは、10年ほど前に訪れたオーストラリアでした。アボリジニの人たちとの触れ合いを通じて、21世紀は消費的な生き方ではなく地球と共存していかなくてはいけないと気づいたのだそうです。その後ハワイに渡ってドルフィンスイムを始めましたが、「自分は癒されても地球は癒されていない」と思い帰国。日本古来の暮らし方と現代のテクノロジーと融合させた生活をしようと決心し、2003年から究極のエコ住宅作りに取り組みました。

テーマは「自然に優しく」「省エネ」「自給自足」。理想の土地探しに始まり、エコな素材探し、慣れない農作業の勉強・・・とくに建築基準法など規制の厳しい住宅作りは本当に大変だった、と振り返ります。探し求めて悩み続けてようやく今年2007年、夢のエコ住宅が完成しました。都心から車で3時間、千葉県の温暖な気候と海と山の恵みが集まった最高の環境。土台のコンクリート以外は全て大地に戻る素材を使い、上下水道も一切引かず、生活用水は全て自分の土地の中で循環、口にするものも全て手作り。今年は稲も作り始めたそうです。小麦色に日焼けした笑顔からは、自分にとって地球にとっての本当のハッピーを全身で追求し続けた力強さも輝いていました。

BeGood Cafe TokyoビーグッドTALK−2
ゲスト:中川 誼美さん(銀座吉水 女将)

中川さんは京都と銀座にある旅館「吉水」の女将。「吉水」は自然素材にこだわりつくした旅館です。例えば壁に使用した珪藻土(けいそうど)という800度で焼いた素材を使ったタイルは、水も油も吸うので湿度の調整に大変有効です。昨年12月に神奈川・大磯に引っ越した中川さんはご自宅でも使っています。出来合いの家をいかに快適にするかが、エコな暮らしの第一歩。盆地で暑い京都吉水でも、エアコンは一切使わなかったそうです。

お話は住まいの工夫から、暮らし全体のお話へと広がりました。中川さんは住まいや暮らしを考える時、縄文時代を思い出すようにしているのだそうです。石鹸もなかった、シャンプーもなかった、化学調味料もなかった、いろんなものがなかったけれども人間は生きていた。「人間の基本に戻って考えてみるのも楽しいゲームかな、と思います」と中川さん。吉水には企業のCSRを担当している人たちがお食事に来ることがあるのですが、そんな時、中川さんは残業のとき何を食べているのか聞くのだそうです。忙しいビジネスマンの答えはたいていコンビニのお弁当。「私はそんなCSR課なんて閉鎖してください、と言うんです。CSRの前に個人の社会的責任=“PSR”ができていないような会社はダメです」という中川さんのご意見に会場から拍手が起こっていました。本当にその通りですね。「みんな誰かが変えてくれるんじゃないか? と思っていますが、1人1人が変わっていかないといけません」エコな暮らし、本当の心地よさに徹底してこだわる中川さんのお話はとても興味深いものでした。

BeGood Cafe TokyoビーグッドTALK−3
ゲスト:Bubbさん(空間工作舎 バイブレーションズ代表)

『アースディ東京』や『フジロックフェスティバル』のステージデコレーションをライフワークとしているBubbさんは、廃材や流木を生かした独特の世界観を作り出しています。Bubbさんにとってはみんながもう使えない、いらないと思っているものもインスピレーションをかき立てる宝物。「人よりも“ゴミ”というレベルが非常に低いんだと思います」とのことです。

BeGood Cafeが05年の『愛・地球博』に出展したオーガニックレストランの内装や、東京にあるBeGood Cafeの事務所もBubbさんの手によるもの。元々は出版社の倉庫だったのですが、木のぬくもりとアメリカインディアンのテイストが交ざった心地よいオフィスを作ってくださいました。家を作ろうとする施主側にできることは何か、Bubbさんに伺ってみました。「自分の城になる場所ですから、出来る限り時間があるときにともかく見学に来てほしいです。そして何をやりたいかという意志表示をして、その家を作り上げていく仲間になっていただければ」とのことでした。人生の大半を過ごすわが家作りには、建てる側ももっとエゴを出して納得のいく空間を追求していくべきなのですね。

BeGood Cafe TokyoビーグッドTALK−4
ゲスト:佐光 紀子さん(ナチュラルライフ研究家、翻訳家)

安全で手軽にできる掃除方法を提唱した著書『ナチュラルクリーニング』でお馴染みの佐光さん。今回はご自身のリフォーム体験、生活の知恵をお話いただきました。10数年前に建売住宅に引っ越した佐光さんですが、そこは間取りも悪く、さらに冬は寒く夏は暑いという家でした。ちゃんとした空調があるのはリビングだけだったので、いつも家族がリビングに大集合してしまうという状況だったそうです。リフォームをしたいと思ったけれど1000万くらいかかってしまう・・・ということで、お金をかけないでそれぞれの部屋を快適にすることに挑戦しました。

屋根の断熱から始まり、床には家族総出で1週間かけてコルク板を敷き詰め。冬にはペアガラスやハニカムブラインドを使い冷気をシャットアウト、夏には風を通す工夫、例えば子供部屋の壁を取り払って広々したスタディルームを作ったり、玄関に植物を植えたり、ウッドデッキで蚊帳を張ったスペースを作ったり。家の前のブロック塀の除去には「生垣助成」という行政から助成制度があったそうです。意外と知られていないお得情報もあるのですね。さらにメンテナンスも心地よく、が佐光さん流。お掃除はホウキとちりとりだけ。電気も使わす、騒音も出ないので時間も選びません。赤ちゃんのいるご家庭でもホコリが立たないのでおすすめだそうです。もちろん重曹、お酢も必需品。今日からすぐ始められそうなエコな暮らしの知恵満載のトークとなりました。

BeGood Cafe TokyoビーグッドTALK−5
ゲスト:甲斐 徹郎さん(マーケティングコンサルタント)

テーマは「“環境”と“コミュニティ”が生まれない現代の構造」。昔は当たり前だったご近所のつながりや家族の団欒が、現代の日本ではすっかり失われています。それはなぜか? 個人のレベルで完結したライフスタイルが確立してしまったことが原因。それによって他者とつながること、つまりコミュニティや関係性が必要なくなってしまったのです。甲斐さんは沖縄のとある村を例に出して説明して下さいました。かつてその地域は海が近くて風が強いので、一軒一軒が自分の敷地を取り囲むように木々を植えていました。そしてそれが集合して1つの集落を形成、それぞれの木々が集まって大きな緑の集合体となり、結果としてその集落は夏の暑さも緩和されてとても快適でした。ですが、沖縄では1960年代に米軍の影響でコンクリートが普及してから、そのような集落は急速に失われてしまいました。
最近は“便利な住宅至上主義”ですが、「便利」とは単なるモノの堆積です。本当に豊かさとは「つながり」が生むのだと甲斐さんは言います。もう一度、“環境”と“コミュニティ”を1人1人が活用し、本当に豊かな社会にするにはどうしたらよいのでしょうか?

(1) 身体と環境をつなげるべし
(2) 「つながり」を外へ広げるべし
(3) 「つながり」を連鎖させるべし

自分の体が何を望んでいるのか考えて実践し、それを連鎖させていくこと。つまり「自分が得をすれば、街が豊かになっていく!」ということなのです。エコというと自分の欲求をガマンしなくてはいけないというイメージがありますが、甲斐さんの考えは全く正反対。なんだかワクワクしてきませんか?

BeGood Cafe TokyoビーグッドTALK−6

甲斐さん、中川さん、Bubbさん、佐光さんが出席してのトーク。甲斐さんから「日本の住宅はかっこいいが自然とのつながりがない。外国の住宅は、例えばバリ島の建築などは特に何もないけれどずっといたくなるようなかんじがする。日本の住宅ではデザインのベーシックが失われているようなかんじがするのですが」という質問がありました。Bubbさんは「いつも感じるのは、建築の人は新しい素材にどうしても手を伸ばしてしまいがち。全くまとまりがないビルが建てられて街の景観が損なわれている。建てる人がイメージを持つことが大切」というご意見がありました。中川さんは「住まいとは生きるための価値観が表現されるところ。基本的に自分がどう生きるか、ということなので、自然と素材も選ばれていくと思います。これは最近の施主さんが一番持っていないことだと建築関係の方がおっしゃっていました。そこで何をしたいのか、どう暮らしたいか、というのをはっきり言ってほしいのだそうです。まず自分の哲学をはっきりさせるということですね」とのことでした。

最後にゲストのみなさんからエコでエゴな住まいを目指す私たちへの応援メッセージをいただきました。
佐光さん:「このリフォームをすることによって自分の生活がどう変わるの? 快適になるの? というのを具体的に想像できる力がないと失敗してしまうと思います。ハウスメーカー任せだと文句を言いやすいですが、自分がどう住みたいかということも含めて、これがいいよと言われたときにそれを実現したときに私の生活はそれによってどうなるの? ということを考えると成功すると思います」

Bubbさん;「家を建てることになったら窓を開けたときの景色がどういうものがいいか、というところから土地探しをしてほしいです。どのくらい気持ちがいい生活がしたいか、なるべく建てる前にエゴをどんどんぶつけて、建てている最中はよいぶつかりあいをして、ご自身も勉強していただきながら一緒に作っていきたいです」
中川さん:「どんな家も欠点があります。失敗もあります。家も生き物として、流動的なものとして考えて、そういうときに諦めないでいいと思います。変えようと思えば変えられると思っていただいたほうがいいと思います。もう1つはぜひみなさん東京から出てください(笑)」

甲斐さん:「私は“エゴでいいじゃん”と思っています。環境問題を自分の存在とは別として考えてしまうと概念論で終わってしまう。エコよりも先にエゴを追求していっていいのでは? 自分の細胞がわくわくすることは正しいのですから、突き詰めていけばエアコンの涼しさが快適ではないものではないことはわかると思います。自分の細胞にウソをつかないエゴをみんなで追求していくことが大切です」


体感型ワークショップ 甲斐さん

BeGood Cafe Tokyo 最初に、暑さ/涼しさの原理を確認。同じ温度でも熱の伝わるスピードによって体感温度が異なるので、鉄は冷たく、空気を含む木は暖かく感じるのだそうです。同じ温度の水と空気も、全く感じ方が異なりますね。

次に、放射の原理を勉強。夏の暑いときに電車に急いで乗ってきた人が隣に座って暑く感じるのは、その人から放たれた熱が自分にぶつかって熱く感じるからなのだそうです。この原理で真夏のアスファルトのなどはとっても暑く感じます。

「気温と放射熱の平均値=体感度」なのだそうです。これを押さえればクーラーいらずの家を作ることが可能に! 環境と自分はつながっていることを考え、素材選びをすればもっと快適な暮らしができるのですね。

出展ブース

今回ゲストとしてご登場いただいた佐光さんオススメの商品の販売をはじめ、グラフィックとアパレルを中心としたコミュニケーションデザインを手がける企画・デザイン会社(株)パンゲアさんのブースが出展されました。
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ゲストプロフィール

■甲斐徹郎さん
マーケティングコンサルタント

甲斐徹郎「環境共生」を専門分野とした住まいづくり、街づくりに携わっている。あくまでも「個人の得」を目的に、「自然環境」と「コミュニティ」とを手段として使いこなす手法として「環境共生」を位置づける独自のスタンスで、いくつもの事業を実践。著書『まちに森をつくって住む』『自分のためのエコロジー』などでその考え方をわかりやすくまとめている。立教大学大学院非常勤講師。
http://www.teamnet.co.jp

■高樹沙耶さん
女優

高樹沙耶83年、女優デビュー。00年、ダイビング・インストラクターの資格を取得。02年、フリーダイビングワールドカップでは水深53Mの日本記録を樹立。季節の移り変わりの中の暮らしを送るべく07年千葉にエゴコロハウスを完成させ、エコでエゴなライフスタイルを実践中。
http://www.saya.jp/

■佐光紀子さん
ナチュラルライフ研究家、翻訳家

翻訳をきっかけに天然素材を用いたシンプルな家事に目覚める。その後、日本の風土や生活に見合った安全で手軽にできる掃除を提唱した『ナチュラル・クリーニング』を上梓。また、心地よい毎日を過ごすために、住み心地を重視したリフォームを試行錯誤しながら実行。体験を著書『からだにやさしくナチュラルリフォーム』にまとめた。
http://www.katoko.com/

■中川誼美さん
銀座吉水 女将

中川誼美70年米国ニューヨーク州ウッドストック(ヒッピームーブメントの聖地)に1年間滞在。帰国後、兼業主婦として2児を育てる。98年京都に自然を肌で体験できる宿「京都吉水」を、03年銀座に内装に自然素材を使った10階建てのビルを建築、宿とレストラン「銀座吉水」を開業。
http://www.yoshimizu.com/

■Bubbさん
空間工作舎 バイブレーションズ代表

Bubb55年北海道生まれ。幼少時代から物作りの楽しさや、自然の気持ち良さを感じていた。旅行業に従事し世界中を回り多くの体験を得て、95年より店舗内装を手掛ける。アースデイ東京、フジロックフェスティバルのステージデコレーションも自身のライフワーク。ゴミ?廃材?ガラクタ?流木が大好き。気持ちが良い空間を極力リユーズ素材で創る。Rhytm! Balance! Harmony!